株式会社カント KANT CORPORATION

連載レポート
アメリカ海軍士官学校合格体験記 レポート:田中敦
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【 No.2】
 
申請手続きの流れ
 
 一般には合格者発表が終了して(4月下旬から次の年の受験準備が始まります。志願者は候補者番号もらえるようにUSNAに申請することが第一歩です。申請手続きはUSNA のホームページに概略が載っているのですが、実際の本音の部分はなかなかわかりません。そこで非常に役に立ったのがFACEBOOK にあるUSNA CANDIDATES という退役海軍軍人で面接官のDoug Cabarle という方が主催しているプライベートグループとUS SERVICE ACADEMY FORUMS というインターネット上で士官学校に合格するための情報交換場所です。志願者の中には4世代にわたって士官学校出身とか両親兄弟全員が士官学校出身という軍人一家は十分な情報をもっているのですが、一般人にはどうやって申請するのかもわかりません。息子もこれらの情報源や海軍・海兵隊の募集事務所に出入りして情報を収集していました。
 申請番号をもらった後に、学校の成績等色々な情報をUSNA に送り、「正式候補者(OFFICIAL CANDIDATE)」として認められるとインターネット上にUSNA の正式候補者用個人ボードを与えられ、その指示に従い必要書類をUSNA ADMISSION に送付して条件を満たしていきます。締め切りは翌年の1月31日となっておりますが、10月に全ての条件を早々とみたすもの、条件付きで合格して、何とか条件を満たすために最後のあがきをするものなど人生いろいろです。
 
 
合格の条件
 
 USNA に合格するための条件とは。
 USNA はWhole Person Multiple (WPM) という選考基準を採用しています。この採用基準は学生を選抜するのに学業のみならず、スポーツ活動、学校内での学生委員会での活動、学外でのボランティア、USNA面接担当官との面接、エッセイなど「全人格」を評価するというものです。特に将来軍隊の指揮官となるため、リーダーシップは重要項目で大きなウェイトを占めています。

(1) 学業成績
 高校での成績はどの程度影響するのでしょうか。
 USNA の公式発表では、2019年の合格者の50% が、SAT READING & WRITING: 630-760, SAT MATH: 620-760 ( 合格者の25% が R & W: 630 以下, MATH 620 以下、その他の25% がR&W: 760 以上、MATH 760以上ということです。) . ACT ENGLISH: 27-34, ACT MATH: 27-32 の範囲とのことです。
 これだけ見ると、超難しいという印象は持たれないと思います。USNA が重視しているのは、高校四年間の成績GPA と学年での成績順位とのことです。合格者のGPA (WEIGHTED) は平均で4.10 。これは四年間ほとんどすべての科目でA を取り続けることが必要ということになります。
 ちなみにハーバード、スタンフォードなどはSAT 1560以上という超秀才が入ります。ただし、これらの有名私立校は、国会議員の推薦、体力試験や健康診断までは要求していませんし、卒業生の家族や多額の寄付金を行なう億万長者の子弟であれば合格させてくれるし、また何回も警察に御厄介になっても入れます。
 士官学校の場合には、品行方正であること、人種の人口比率を合格者の人種構成に反映しなければならないことや50州全州からの入学を考慮しなければならないので、どうしても制約が出てきます。入学者の人種構成をみると、63.8% が白人 残りがマイノリティーとなっています(Hispanic :11.3%. Asian: 7.1% .Black : 6.52% その他)。白人、アジア人は志願者も多く激戦となっているとのことです。

 

 海軍士官学校の合格者、不合格者のGPA (内申書)とSAT /ACT (統一試験)の相関表

 両者の結果が悪いにもかかわらず合格しているのは、スポーツ推薦か親のコネか。また両者の得点が高いのに不合格になっているのは、体力試験や身体検査に合格しなかったと推測されます。

(2) スポーツ

 スポーツも重要な要素です。サイバー戦争やドローン、ロボットが未来の戦争の主役といわれていますが、まだまだ体力重視の軍人が重要であることには変わりはありません。合格者の多くは高校のスポーツクラブのキャプテンを務めており、レターを取得しています。息子もテニス部のキャプテンをしていましたし、地区大会で決勝リーグに残ったことでレターを獲得していました。中には、アメリカンフットボールや水泳で全国大会出場などスポーツエリートが多くおります。ただし、学業不振であればどんなにスポーツができても合格させてくれません。このような候補者にはNAPS ( NAVAL ACADEMY PREPARATORY SCHOOL ) という国立の予備校で一年間勉強させて、次の年に合格させるという裏技も使います(毎年200人くらいがNAPSから入学します)。

(3) ボランティア活動
 ボランティア活動も社会貢献をしているということで重要な要素です。候補者たちの話をまとめると、教会のボランティアをしていたものが多かったと記憶しています。息子は赤十字で無料の火災警報器を貧困家庭にとりつけるボランティアをしたり、下院議員選挙で共和党の候補の運動員などをしていました。ちなみにUSNA では70% が共和党支持者ということで、はっきりと民主党支持を表明するものはほとんどいない感じです(残りの30%は無党派層と自称しています)。

(4) 奨学金獲得歴
 ナショナルメリットなどの奨学金を獲得していることなども評価の対象となります。息子は、HSF YLI SCHOLARSというHISPANCの子弟に与えられる奨学金に合格しておりました。ちなみに息子はアジア人とヒスパニックのMIX なので受給資格がありました。ここで息子が知り合った友人の多くが、ハーバート、イェール、スタンフォード、MIT などに進学したことを後で知り、アメリカにおけるHISPANIC の印象が大きく変わりました。息子の通っていたロサンゼルス郡の公立高校は、70% がメキシコや中米出身のHISPANIC で学業不振者が非常に多かったからです。
 NROTC ( 海軍予備役士官奨学金)の獲得歴については、士官学校の合格には影響はないと思われます。息子は、この奨学金の獲得者でしたが、多くの士官学校合格者が、この奨学金を申請していたにもかかわらず獲得していなかったことから全く別の基準で選考されているようです。

これらの他にも、生徒会会長であったとか、学校新聞の編集長であったとか、勉強一本の日本の受験とは全く異なるアメリカの進学事情に驚かされました。

(5) 大統領、上院議員・下院議員などからの推薦
 士官学校受験と他の大学受験とで最も大きな違いは、これらの推薦状が必要ということです。学力・スポーツ・ボランティア活動等、非の打ちどころの無い候補者でもこの推薦が無いと合格させてくれません。将来国家機密に接する機会のある士官の身元保証といった側面が強いとおもわれます。
なぜなら、沿岸警備隊士官学校ではこの推薦は不要だからです。

 大統領の推薦は海外に住んでいてアメリカ国内に住所が無い軍人の子弟に与えられるようですが、海外に住んでいなくても、コネがあれば獲得できるようです。ただ、大統領の推薦が特に有利に働くことは無いようです。
 上院議員や下院議員は彼らのホームページに必ず推薦を獲得するためのページを設けております。各議員は士官学校ごとに5人を推薦できます。たとえば、海軍士官学校5人、陸軍士官学校5人、空軍士官学校5人。ただし、過去に推薦して合格した者が、まだ士官学校に在籍しているとその人数分が減らされます。たとえば、過去に海軍士官学校に推薦して合格した者が全学年を通じて3人いるとすると、その年は2人までしか推薦できません。
 推薦状を申請するには、学校の成績、志望動機のエッセイ等を各議員の事務所の担当官に送付し書面審査に合格すると面接試験があります。その後、第一順位の候補者、第二順位とランク付けがされます。この順位は意外と重要で、第一順位の候補者は士官学校の候補者の第一グループに入れられ、全国の議員から推薦された州内部の他の第一順位の候補者と競い合います(州内部での限定された競争)。そこで合格できなかったものは、全国の第二、第三の順位のものと一緒にされ、全州(50州)の候補者と競争することになります(場外乱闘のイメージ)。

  国会議員から推薦状をもらっても合格したことにはならないので、ご注意。息子はカリフォルニア州の上院議員、Dianne Feinstein(民主党)とKamala Harris (現在の民主党副大統領候補)に推薦の依頼をしましたが、何の返事ももらえず、下院議員Brad Sherman ( 民主党)から推薦状をもらいました。

(6) 健康診断 The Department of Defense Medical Examination Review Board (DoDMERB)
 この健康診断で不合格になるものが多くいます。全生涯の医療履歴を報告することが義務とされ、嘘の報告は、合格後であっても退学処分になる可能性があります。手術歴などでも不合格になる場合もあり、毎年多くの候補者が不合格となります。ただ一時的な疾病では、回復したと判断されれば合格とされます。この健康診断は指定された機関で行われます。
 中には入校するまでに減量することを条件に合格を認められることもあります。

(7) 体力試験(CFA)
 体力試験も他の大学では要求されないのですが、これに引っかかって不合格になるものが毎年多くでます。やはり士官になるためには体力も秀でていないと実戦では役には立ちません。この体力試験に合格しても、入学後の一か月はPLEBE SUMMER という新兵訓練がありますのでベストなコンディションを長い期間保つ必要があります。

(8) Blue & Gold Officer との面接試験
 海軍が選抜した面接官との面接試験でよい評価を得ることが必要です。この面接官はボランティアで、息子は海軍士官学校の卒業生で退役軍人が指名されました。わざわざ自宅で面接を行ってくれました。
 この面接は、書類審査で優秀な成績をとっていても、サイコパスや反軍思想保持者など人格等に問題があるような候補者を入学させないことが目的といわれていますが、成績優秀、体力満点で国防意欲満々の「上玉」を見つけることも重要な目的とされています。

 以上のように通常の大学の入学プロセスとは大いに異なります。非常に多くの関門があり候補者の多くが途中で脱落していきます。


【 No. 1 】
 
 
USNA
USNA校章
 
  アメリカ合衆国では国立大学と呼べるものは実際上、陸軍士官学校(United States Military Academy)、海軍士官学校(United States Naval Academy)、空軍士官学校(United States Air Force Academy)、沿岸警備隊士官学校(United States Coast Guard Academy) の四つの軍事学校です。
 
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日本で有名なのは、陸軍士官学校、(USMA通称 West Point )でしょう。マッカーサー元帥、アイゼンハワー大統領の出身校です。海軍士官学校の卒業生では、チェスター ニミッツ提督、ジミー カーター大統領という顔ぶれで日本人にはあまりインパクトは無さそうです。空軍士官学校(USAFA)は第二次世界大戦後に設立(1954年)されたので多くの日本人は存在自体をしらないと思います。ちなみに、海軍士官学校 (USNA 通称 Annapolis )の設立は1845年、陸軍士官学校は、1802年となります。
 
USMA全景
(USMA 全景と校章)
USMA校章
 
USAFA全景
(USAFA 全景と校章)
USAFA校章
これらの士官学校は、アメリカ国籍を有さないと原則として入学できないので、受験の実態は、ほとんどの日本人は知らないと思われます。しかし、敢えてニッチなテーマに絞って筆者の息子の受験体験記を掲載させていただきます。息子はアメリカ、カリフォルニア州の公立高校に入学し2020年7月にUSNA Class of 2024 として入学しました。
 
アメリカでの士官学校の評価は非常に高く、USMA はForbes誌の大学ランキングで一時、ハーバード大学 MIT, スタンフォード大学を抜き第一位を獲得したこともあります。また、アメリカでは、士官学校に入学することは、Ivy league に入学するくらい名誉なこととされております。この点は戦前の日本で陸軍士官学校、海軍兵学校( 海軍経理学校)に入学することが名誉なこととされていたことに通じるものがあります。
特に保守的な地方都市では、士官学校に合格すると地元の地方紙に写真入りで報道されたり、市長が合格者を集めてパーティーを開いたりと地元の名士になってしまいます。昔はオープンカーで市長と一緒にパレードしたそうです。

2020年の出願者と入学者の数は以下の通りとなります。
出願者数: 15,699 ( 男性: 11,121 女性: 4,578)
入学者数: 1,194 (男性: 830 女性:364)

2019年の出願者、合格者、入学者の数は
出願者数: 16,332 ( 男性: 11,791 女性: 4,541)
合格者数: 1.360 (男性: 983 女性: 377)
入学者数: 1,181 (男性: 871 女性:310)
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それではアメリカ海軍士官学校(USNA)の選考基準を見てみましょう。
 
基本的な資格:
米国市民権保持者
・ 入学した年の7月1日付で17-23 歳であること
・ 未婚
・ 妊娠しておらず、扶養家族もいない
・ 有効な社会保障番号を持っている

基本的な資格要件は以上ですが、申請システムは最低でも6ヶ月かかり中には一年近くかける人もいます。申請プロセスは非常に煩雑で他の大学の申請プロセスとは大きく異なります。

予備申請
但し、USNAの夏期プログラムのいずれかに参加した場合、予備申請はすでに完了しているため予備申請は不要

USNAは、すべての申請者に、競争力を判断するために予備申請を提出するよう要求します。このアプリケーションでは、以下を提供する必要があります。
・ 社会保障番号
・ カウンセラーからの高校教育試験サービス(ETS)コード 
・ 高校クラスのランク
・ 議会の州と地区
・ 郵便番号
・ 大学入試テストのスコア(SAT、ACT、またはPSAT)

審査後、アカデミーは受理した受験者を公式候補者として、Web上の申請手続きのページを与え、手続きをそのページ上で行うことになります。

正式申請 (USNAの公式候補者として申請する)
正式に候補者になると、ハードワークが始まります。
候補者は、学歴、身体能力、およびリーダーシップを証明するする追加資料を提出する必要があります。

SATまたはACTスコア
高校の成績証明書
(多くの申請者がAPコースを受講)
推薦状(正副大統領、上院及び下院議員その他)
国防総省の健康診断審査委員会によって行われる健康診断
体力測定
入学したい理由を詳述した個人的なエッセイ
USNAブルー&ゴールドオフィサー(面接専門の担当官)との面接

 
軍隊は国家の将来を決定することを踏まえリーダーシップ能力は非常に重視されております。
次回では、詳細を見ていきます。
   
US NAVAL ACADEMY全景(メリーランド州 アナポリス)
US NAVAL ACADEMY 全景 (メリーランド州 アナポリス)

 


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